敏腕記者ヒルディ(ロザリンド・ラッセル)は、仕事人間の上司であり元夫のウォルター(ケリー・グラント)に堅実で優しい保険外交員ブルース(ラルフ・ベラミー)と結婚し記者を辞めると報告する。ヒルディに未練があるウォルターは動揺。警官殺しの罪に問われる死刑囚の冤罪疑惑をちらつかせ、浮かれるヒルディの記者魂に再び火をつけようとするが…。戯曲『フロント・ページ』の映画化作品『犯罪都市』をもとにリメイクしたスクリューボール・コメディ。言わずと知れた名作だが、今回は1986年にプロになる以前の太田直子が字幕翻訳を手がけたアテネ・フランセ所蔵バージョンで上映。
※国立映画アーカイブ所蔵スチル
世界中の港町に馴染みの女性がいる水夫スパイク(ヴィクター・マクラグレン)だが、今度の航海では水夫ビル(ロバート・アームストロング)に先を越されてばかり。喧嘩になるも一転、ふたりは気の合う相棒になる。そのあと中継地マルセイユで、スパイクはマムゼル・ゴディバことマリー(ルイーズ・ブルックス)に恋をするのだが……。
豪快な水夫たちが紡ぐ傑作ブロマンス映画で、喧嘩での大立ち回りなど運動の躍動感を的確にとらえるホークスの演出が秀逸。そして脇役ながらルイーズ・ブルックスがまばゆい魅力と存在感を放っている。ドイツの映画監督F・W・パブストは、本作を観てルイーズ・ブルックスを『パンドラの箱』の主役に起用したという。
所蔵:国立映画アーカイブ
©1953 ORKIN/ENGEL FILM
AND PHOTO ARCHIVE
馬が大好きなジョーイ(リッチー・アンドルスコ)は兄のレニー(リチャード・ブリュースター)と遊びたくてついて回るが、レニーからするとそれが疎ましい。誕生日祝いに友人たちとコニー・アイランドへ行くはずが留守番を命じられたレニーは、友達と示し合わせて死んだふりをする。信じこんだジョーイが逃げ込んだ先はコニー・アイランドであった…。
エディ・マンソンの演奏するハーモニカも相まって童心がよみがえる名作。写真家のエンゲルが写真家仲間の友人と開発した小型の35mmキャメラによって、50年代の賑やかなコニー・アイランドや人々の様子が鮮やかに記録されている。
この作品はヌーヴェル・ヴァーグに強く影響を与えた。
©DR
1930年代のインド・カルカッタ。フランス大使夫人アンヌ=マリー・ストレッテル(デルフィーヌ・セイリグ)は、彼女を信奉する男たちと日々情事を結んでは退屈を紛らわせている。ある夜大使館でのパーティーにラホールの元副領事(ミシェル・ロンダール)が現れ、彼の狂気と愛がアンヌ=マリーを破滅へ導く……。
全篇にわたってオフの声をのせる試みは映像とセリフの関係に新たな地平を切り拓き、デュラスの作品世界を映画のなかへ移植するのに成功した。『ヘカテ』なども手がけた音楽家カルロス・ダレッシオの音楽も素晴らしい。
ローマ帝国の次なる後継者になるため執政官ヴィニウス(アドリアーノ・ペンサベーネ)は、オトン(アドリアーノ・アプラ)に、オトンの恋人で自身の娘プラウティーヌ(アン・ブルマーニュ)でなく皇帝の姪(オリンピア・カルリージ)と結婚するよう命じるが──。
17世紀フランスの劇作家コルネイユが書いた同名戯曲をローマの廃墟でフランス語を母語としない演技未経験者たちが演じるという奇妙な試みは、次第に虚構と現実の間を曖昧にしていく。
ストローブは本作を「ホークス的作品」と位置付け、山崎は字幕翻訳者として「今までで手強かった3本」のひとつに本作を挙げていた。
【併映作品】
バレスの『東方の砦』三部作の第一作「ドイツに仕えて」の抜粋に基づき、アルザス守護聖人の修道院がある聖オディル山でデジタル撮影。ストローブ自らロレーヌ人に扮し、ジョゼフ・ロトネール扮するアルザス青年と対話する。