明るい地点へ
個と集団のゲストゥス
2025年4月19日(土)
会場:アテネ・フランセ文化センター
来るべき『MORE NOMAN』へ向けて——
1930年前後、劇作家のベルトルト・ブレヒトは、劇の上での役から距離を取り、出演者が自ら思考を働かせることを意図した教育劇の執筆に取り組む。本上映会が目論むのも、ブレヒトが目指した、上演(上映)を通して観客と作り手が一緒に思考を育む実践の場です。
ブレヒトの教育劇『イエスマン、ノーマン』を映画化した松村浩行の作品群が一貫して呼びかけるのは、個が集団に対して主張する意志であると同時に、集団が個に対して行うゲストゥス(身振り)の重大性に他なりません。松村がスタッフ・キャストとしてかかわったこれまでの自主映画作品もまた、映画が作家゠個人の力だけによるのではなく、集団のゲストゥスによって育まれることを再認識させるでしょう。それらの作品は、フィルムからデジタルの移行期間に制作され、デジタル技術によってあらゆるものが改変可能になりつつある現代を見つめ直すための鏡となります。
個と集団。物語と歴史。デジタルとフィルム。改変可能なものと改変不能なものを両目で見据えることで、世紀の転換期に作られた映画の可能性を再考します。